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世界遺産検定2級合格の練習問題&解説【基礎知識 ①|世界遺産誕生までの流れ】

こちらでは、NPO法人世界遺産アカデミーの「世界遺産検定2級」の合格60点に向けて、「基礎知識」について練習問題と解説で必要な情報を紹介していますので、ご活用頂ければ幸いです。(※練習問題は過去問題などを参考に作成しています。)

日本の世界遺産」に関してはこちらをご覧ください。 

 

世界遺産検定2級合格ー基礎知識 ①:世界遺産誕生までの流れ

◆ 学習のポイント

文化財の保護と自然の保護は別々な考え方で存在していたものが、1つの条約世界遺産条約)で一緒に保護されることで世界遺産誕生しました。ここでの学習のポイントは世界遺産誕生までの流れを理解することです。尚、年代暗記は不要です。

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基礎知識①の練習問題

1⃣ 「世界遺産条約」に関連する出来事が起こった順番に並べたものとして、正しいのはどれか。

A.イエローストーン国立公園の誕生

B.ヌビアの遺跡群救済キャンペーンの展開

C.ユネスコ憲章の採択

D.国連人間環境会議

 

A⇒B⇒D⇒C
A⇒C⇒B⇒D
B⇒A⇒D⇒C
B⇒C⇒A⇒D

【難易度:中】 

 

 

2⃣ 「歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議」で採択された「ヴェネツィア憲章」の説明として、正しいものはどれか。

 

ヴェネツィア憲章において、「文化的景観」という概念が示された
遺産の修復の際には近代的な技術や材料の使用を推奨している
ヴェネツィア憲章の採択を受け、アテネ憲章が採択された
ヴェネツィア憲章の考え方に基づきICOMOSが設立された

【難易度:中】 

 

 

3⃣ 「世界遺産条約」に関連する出来事が起こった順番に並べたものとして、正しいものはどれか。

A.国連人間環境会議が開催された

B.「武力紛争の際に文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)」が採択された

C.ヴェネツィア憲章が採択された

 

A⇒B⇒C
A⇒C⇒B
B⇒A⇒C
B⇒C⇒A

【難易度:中】 

 

 

練習問題の解説 

世界遺産誕生の流れ「文化財保護⇒文化遺産

▶1931年 アテネ憲章 採択

文化財の保護・修復

 修復の際、近代的な技術と材料の使用を認める

▶1945年 ユネスコ憲章 採択

▶1954年 ハーグ条約 採択

国際紛争や内戦から文化財を守る

▶1960年 ヌビアの遺跡群救済キャンペーン

・アスワン・ハイ・ダムの建設    

▶1964年 ヴェネツィア憲章 採択

文化財の保護・修復

 修復の際、建設当時の工法・素材を用いる

 ⇒ 真正性の概念(ICOMOS設立につながる)

▶1965年 ICOMOS 設立

文化財の保護

▶1972年 国連人間環境会議

文化財保護と自然保護を1つにまとめる

▶1972年 世界遺産条約 採択

・第17回 ユネスコ総会

▶1976年 世界遺産委員会 設立

世界遺産条約締約国会議

▶1978年 最初の世界遺産12件登録

・第2回 世界遺産委員会

 文化遺産8件、自然遺産4件

 

世界遺産誕生の流れ「自然保護⇒自然遺産」

▶1872年 イエローストーン国立公園

アメリカに世界最初の国立公園が誕生

▶1945年 ユネスコ憲章 採択

▶1948年 IUCN 設立 

・自然の多様性を保護     

▶1970年 MAB計画 決定

・環境資源の持続可能な利用と環境保全

▶1972年 国連人間環境会議

文化財保護と自然保護を1つにまとめる

▶1972年 世界遺産条約 採択

・第17回 ユネスコ総会

▶1976年 世界遺産委員会 設立

世界遺産条約締約国会議

▶1978年 最初の世界遺産12件登録

・第2回 世界遺産委員会

 文化遺産8件、自然遺産4件

 

▶ 世界遺産条約と関連する憲章・条約

◆ 世界遺産条約(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約)

条約の目的は、文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷,破壊等の脅威から保護し,保存するための国際的な協力及び援助の体制を確立することです。

 

世界遺産条約重要なことは、文化遺産と自然遺産を1つの条約で保護している点です。また、世界遺産保護・保全義務や責任は遺産の保有である点です。更に、教育・広報活動の重要性にも触れています。

 世界遺産条約の概要

  1. 文化遺産及び自然遺産の定義
  2. 文化遺産及び自然遺産の国内的及び国際的保護:自国内文化遺産や自然遺産の認定・保護するのは、各締約国にかされた第一の義務である
  3. 世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会:世界遺産委員会21の締約国)の設置、世界遺産リスト危機遺産リストの作成
  4. 世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための基金世界遺産基金ユネスコ信託基金)の設立、資金は世界遺産委員会の決定で利用される
  5. 国際的援助の条件及び機能
  6. 教育事業計画:教育・広報事業計画(教育・広報活動の重要性を明記
  7. 報告:締約国の活動報告⇒世界遺産委員会に通知⇒ユネスコ総会に提出
  8. 最終条項:世界遺産条約の規定

  

アテネ憲章(歴史的記念建造物の修復のためのアテネ憲章)

1931ギリシャ共和国アテネで開催。

第1回「歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議」でアテネ憲章採択。記念物や建造物、遺跡などの保存・修復に関する基本的な考え方を初めて明確。「文化遺産を尊重し保護・修復する際、近代的な技術と材料の使用を認めている。」

 

ヴェネツィア憲章(記念建造物及び遺跡の保全と修復のための国際憲章)

1964イタリア共和国ヴェネツィアで開催。

第2回「歴史的記念建造物に関する建築家・技術者国際会議」でヴェネツィア憲章採択。アテネ憲章の理念は引き継がれている。「文化遺産を尊重し保護・修復する際、遺産の修復の際には建設当時の工法、素材を尊重する。」但し、伝統的な技術が明らかに不適切である場合のみ、近代的な技術を用いることができる。

このヴェネツィア憲章が世界遺産条約における「真正性」の概念となり、1965に真正性を検証する機関として「ICOMOS」が設立された。

アテネ憲章」と「ヴェネツィア憲章」は共に「文化遺産を尊重し保護・修復する」という理念は同じですが、その方法が異なっています。

アテネ憲章では、修復の際に「近代的な技術や素材の使用を認めている」が、ヴェネツィア憲章では「建築当時の工法や技術、素材を使用すること」が求められます。
尚、ヴェネツィア憲章では伝統的な技術が明らかに不適切である場合のみ、近代的な技術を用いることができないのです。

名古屋城大阪城の例では、戦時中の空襲などで焼けた後、伝統的な素材ではなくコンクリートや鉄筋などで再建され、この点ではヴェネツィア憲章を受け継ぐ世界遺産リストに記載されるのは難しいです。

一方、『姫路城』の「昭和の大修理(1956年)」や「平成の大修理(2009年)」では、ヴェネツィア憲章を受け継いだ改修につき、「17世紀の建造物」として評価されています。

因みに、『古都京都の文化財』では7世紀の建造物が何度か炎上した後に、17世紀に再建されたものは「17世紀の建造物」としての評価になります。

 

ユネスコ憲章国際連合教育科学文化機関憲章

19451116、イギリスのロンドンにてユネスコ憲章が採択。

教育や科学、文化を通じて諸国民の連帯を促進し、人種や性、言語、宗教の差別なく正義や人権、基本的自由が尊重される世界の平和と福祉に貢献することを目的とする。

憲章の前文の一部抜粋

「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中にこそ、平和のとりで築かなければならない。相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の人々の間に疑惑と不信を引き起こさせた共通の原因であり、この疑惑と不信のために、世界中の人々の差異があまりにも多くの戦争を引き起こした。」

これは、「諸国間、諸民族間の交流を進め、文化の多様性を理解・尊重しあうことが、世界の平和につながる」という理念につながります。

 

ユネスコUnited Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)

ユネスコ(UNESCO:国際連合教育科学文化機関)はフランス共和のパリに本部を置く、国際連合の専門機関。1945に創設

総会は通常2年に1度開催し、UNESCOが行う活動方針や政策の決定、執行委員会が提出した計画の決議、執行委員会の選挙などを行う。

日本人初ユネスコ事務局長に「松浦晃一郎」が8として、2期(1999~2005、2005~2009)努め、無形文化遺産条約の成立などに尽力した。

 

ハーグ条約(武力紛争の際に文化財の保護に関する条約)

1954オランダ王国のハーグで開催。

国際紛争や内戦、民族紛争などから文化財を守るための基本方針を採択。

武力紛争だけでなく、平時においても文化遺産や美術館、図書館を保護することを義務付けている。

 

文化財の不法な輸入、輸出及び所有権譲渡の禁止並びに防止の手段に関する条約

1970、第16回ユネスコ総会で採択。

保護管理体制の不備などにより盗難された文化財の密貿易などを禁止する条約。

 

◆ 人間環境宣言(ストックホルム宣言)

1972スウェーデン王国ストックホルムで開催。

国際連合人間環境会議」にて採択。

国際社会が初めて開発問題と環境保全の原則を、自然環境の保護・保全が、人類の福祉や経済発展にとても重要であるとした。

この機会に、文化遺産と自然遺産を保護・保全する条約作りが進められ、同年(1972年)のユネスコ総会にて世界遺産条約としてまとめられた

 

◆ 公的又は私的の工事によって危機にさらされる文化財保全に関する勧告

19603ヌビアの遺跡群救済キャンペーンアスワン・ハイ・ダムの建設)を受け、1968年の第15回ユネスコ総会で採択。

世界の文化財は、社会的・経済的な発展による変化との調和を図りながら保護し、公開することなどを各国の義務として求める。

 

▶ ヌビアの遺跡群救済キャンペーン

かつてのエジプトでは、毎年夏になるとナイル川が氾濫して下流では洪水が発生していました。ただ洪水はナイル川流域に肥沃な土壌を形成することに役立っており、つまり洪水は古代からのエジプトの文明を支えてきた側面があったのです。

イギリス占領下の1902年、エジプト南端部のアスワン地区のナイル川に、巨大ダム(アスワン・ロウ・ダム)が建設されました。建設目的は、ナイル川氾濫防止と灌漑用水の確保です。

次第に、アスワン・ロウ・ダムだけではナイル川氾濫防止と共に、安定した電力供給確保が難しく、6.4km上流に更に巨大なアスワン・ハイ・ダムの建設計画を1952年に立案し始めます。

巨額の建設資金や機器提供などが当時のソビエト社会主義共和国連邦から申し出があり、ソビエト連邦の企業「ギドロプロエクト」が設計協力する巨大プロジェクト「アスワン・ハイ・ダム」の起工式が1960年1月9日に行われ建設がスタートしました。

この巨大ダム建設を知ったユネスコは、着工の前年からアブ・シンベル神殿について調査を開始し、1960年3月から世界に「ヌビアの遺跡群救済キャンペーン」を呼びかけ、約50ゕ国の協力の下、1964年から救済事業がスタートしました。

アブ・シンベル神殿を小さなブロックに切断・解体し、1968年9月に元の場所から高さ64m、西へ210mに移築されました。巨大なアスワン・ハイ・ダムは神殿移築後の1970年に完成しました。

当初、ヌビア遺跡のアブ・シンベル神殿をはじめとする遺跡群は、そのまま水没する計画でしたが、国際社会からの批判の声が強く、最終的にユネスコから援助を受けて、巨額の費用をかけて湖畔に移築されました。移築はアブ・シンベル神殿だけではなく、アスワン・ロウ・ダム建設時から水没していたフィラエ島のイシス神殿や、カラブシャ神殿、アマダ神殿、ワディ・セブアなど10個ほどの遺跡も合わせて水面上へと移設されています。

このキャンペーンがきっかけとなり、世界的に価値のある遺跡、建造物、自然を、一国だけでなく人類共通の財産として保護する国際的枠組みの必要性が認識され、キャンペーン終了後の1972年にユネスコ総会で世界遺産条約が採択されました。

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アブ・シンベル神殿の移築工場の様子/引用先:ウィキペディアWikipedia))
 

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終わり

世界遺産は、過去から現在へと引き継がれてきたかけがいのない人類共通の財産です。そんな世界遺産を未来へ引き継ぐために、世界遺産を学び理解を深めたいものです。

近年、世界遺産を巡る旅が注目される中、世界遺産の知識があれば旅の楽しみも倍増です。

2020年にNPO法人世界遺産アカデミーの「世界遺産検定2級」を受験し一発合格しました。次は1級受験を目指し、その対策をブログで紹介して行きます。

初めに2級試験対策の振り返りながら、1級試験対策を掲載予定です。

市販の過去問題やテキストなどを参考に練習問題を作成していますので、高得点や合格確実を目指している方は、他のサイトなども合わせて参考にされることをお勧めします。

また、世界遺産にご興味を持って頂けるような記事も書いて行きますので、ご関心がありましたら、ご一緒に取り組んで頂けると嬉しいです。

 

最後までご覧くださいましてありがとうございました。
次回もよろしくです。

 

▶ 学習に便利な書籍紹介  

世界遺産検定公式過去問題集1・2級<2021年度版>

世界遺産検定公式過去問題集1・2級<2021年度版>

 
世界遺産検定1・2級公式過去問題集<2020年度版>

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くわしく学ぶ世界遺産300 世界遺産検定2級公式テキスト<第3版>

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世界遺産検定2級の出題割合(問題数60問、試験時間60分間)

・基礎知識:20% ・日本の世界遺産(23件):25% ・世界の文化遺産:35% ・世界の自然遺産 ・時事ネタ:10% (※世界の文化・自然遺産の出題範囲は300件が対象です)

初めに基礎知識日本の世界遺産23件を着実に習得して、時事ネタ(試験6ゕ月前からの新聞・ニュースなど参照)も合わせながら、全体の55%を獲得できる知識を身に着けることで、確実に合格圏内に近づきます。頑張れば1ゕ月程で試験対策ができます。